熟成ミニ樽 導入店
和牛を“育てる酒”とともに味わう
肉割烹 加賀屋

熟成ミニ樽 導入店<br>和牛を“育てる酒”とともに味わう<br> 肉割烹 加賀屋

TARU HOLIC「熟成ミニ樽」を導入するお店が全国的に増えつつあります。今回はその中でも、千葉県松戸市の名店「牝牛(めうし)和牛専門」の和食料理店「肉割烹 加賀屋」様を訪ね、お話を伺いました。

お店を切り盛りするのは、店主の加賀祐一さん。和牛への並々ならぬ探究心から、全国の雌牛だけを厳選して提供する肉割烹を開業。お客様一人ひとりに合わせたコース料理を提供するほか、最近ではTARU HOLICのミニ樽を活用し、ジャパニーズウイスキーを店内で熟成するという新しい提案にも取り組まれています。

牝牛和牛・和食・ウイスキーという3つの要素が交わる「肉割烹 加賀屋」。そのこだわりと情熱、そして“育てるお酒”の可能性について、じっくりとお話をお聞きしました。

お店のコンセプトと“牝牛”への強いこだわり

── それではまず、お店「肉割烹 加賀屋(かがや)」の雰囲気やコンセプトについて教えていただけますか?

加賀さん:

うちは天井が高くて、レイアウトもゆったりしてるんですよ。料理も、和牛の中でも“牝牛(めうし)”だけを厳選して出してるので、正直リーズナブルではないんです。なので、席と席の間隔も広くとって、圧迫感を感じないようにしています。


── なるほど、空間設計も高級和牛にふさわしい工夫がされているんですね。ところで、どんなお肉を扱っているんですか?お肉の等級ってA5ランクとか言いますが……。

加賀さん:

それがね、もう「A5ランク」って時代遅れなんですよ。10年前から言い続けてますけど、A5だからって美味しいわけじゃない。むしろ、和牛の美味しさを突き詰めていくと、間違いなく“牝牛”に行き着くんです。


── 牝牛、ですか。

加賀さん:

はい。オスの牛って、早い段階で去勢しちゃうんですね。運動量も落として、脂を入れていくんですけど、どうしても脂の融点が高くて、脂っこく感じる方が多い。


── それに対して、牝牛は?

加賀さん:

牝牛は融点が低いから、口の中でスッと溶けて、脂が残らない。肉のキメも細かいし、味わいも深い。うちは全国から、その“美味しい牝牛”だけを集めていて、それをコース料理として提供しています。


脂でごまかさない──部位ごとの個性を活かす肉選び

── 加賀さんが、お肉を選ぶ際に大切にされているポイントについて教えてください。

加賀さん:

一番大事にしているのは、「脂でごまかさないこと」ですね。


── 脂でごまかさない、というのは?

加賀さん:

例えば、見た目がものすごく綺麗なお肉でも、実際に食べてみると脂っこくて、味がぼやけてしまっているお肉ってあるじゃないですか。誰しも一度は経験あると思うんですよ。脂のインパクトはあるけど、肝心の“肉の味”が感じられない。そういうお肉は、私は選びません。


── 見た目だけではなく、味そのものを重視されていると。

加賀さん:

はい。私が出したいのは、部位ごとの違いがちゃんと伝わるお肉です。ヒレにはヒレの良さがあり、サーロインにはサーロインの魅力がある。ももには赤身らしい旨味がしっかりあるんですよ。それをお客様に感じていただきたい。


── たしかに、脂が強すぎるとどれも似た味に感じてしまいますよね。

加賀さん:

まさにそれです。全部脂っぽくなっちゃって、味の違いが分からなくなる。だから私は、程よくサシが入りつつ、しっとり感があって、香りや風味が引き立つお肉を選びます。


──お肉を選ぶ際は①部位ごとの味わいがきちんと伝わるかどうか②風味③しっとりとした食感、の主に3つを大切にされてるんですね。

 

“カルテ管理”によるおもてなしと、おすすめ部位の話

── お肉に関して、もう少し詳しく伺いたいのですが、特に人気のあるメニューや、来店されたらぜひ食べてほしいものはありますか?

加賀さん:

もちろんありますよ。ただ、お客様の好みにもよるんです。シャブシャブが好きな方もいれば、ステーキを食べたい方もいる。それに応じて、うちは「お客様ごとのカルテ」を作ってるんですよ。


── カルテ、ですか?

加賀さん:

はい。例えば、前回来店時に召し上がった料理とか、年齢層、好みなんかを全部記録して管理しています。それをもとに、同じものばかりにならないように内容を調整してるんです。


── それはすごいですね。お客様ごとに内容を変えるコースって、なかなか聞かないです。

加賀さん:

例えば、前回すごく喜ばれた料理は残しつつ、他の部分はガラッと変えるとか。だから、同じ「おまかせコース」でも、お客様ごとにまったく違う内容になってます。


── “オートクチュール”のようなコース料理なんですね!

加賀さん:

あとは、アラカルトもありますよ。お酒をゆっくり楽しみたい方には、おつまみ感覚で召し上がれるように。コースだけだとテンポが早いですからね。ゆっくり飲みたい方には、アラカルトでのんびり楽しんでもらってます。


── おすすめの部位はありますか?

加賀さん:

うちで特に有名なのは「黒タン」ですかね。黒毛和牛のタンなんですが、とにかく希少で歩留まりはヒレ肉よりも少ないんです。脂のノリが絶妙で、歯切れが良くて、噛むほどに旨味が広がります。


── 黒タン……贅沢ですね。

加賀さん:

普通のタンとはまったく違いますよ。食感がサクッとしてるし、厚みがあっても柔らかい。常連さんからも人気です。


“牝牛”にたどり着くまで──経験ゼロからの起業と修行の日々

── 牝牛にこだわるようになった経緯を、もう少し詳しくお聞きしてもよろしいですか?全国から仕入れているとのことですが、どうやって見つけてこられたのでしょう。

加賀さん:

実はね、うちが全国から牝牛を仕入れられるようになったのは、あるお肉屋さんとの出会いがきっかけなんです。うちはもう開業して16年と7ヶ月になりますけど、最初から牝牛専門だったわけじゃないんです。


── 最初は違ったんですか?

加賀さん:

はい。当初はA4やA5を使っていました。でも、実際に食べてみるとすごくバラつきがあって。見た目はキレイでも脂っこいだけで味が感じられないとか……。で、美味しいなと思った時って、必ず牝牛だったんですよ。


── へー!それで牝牛に絞ったんですね!

加賀さん:

そう。でも最初は肉屋さんに「牝牛だけ仕入れてください」ってお願いしても「無理です」と断られてました。そんな中である日、お客さんとして来店された方が精肉店の方でお店をすごく気に入ってくださりました。


── そしてどうなったのですか……?

加賀さん:

その方が「牝牛、扱ってますよ」と言ってくださって。次の日にトラックでたくさんの牝牛のお肉を持ってきてくれて、それからずっとお付き合いしています。私の好みも理解してくれて、脂が強すぎない、しっとりした赤身のおいしい牝牛を毎回持ってきてくれるんです。


── すごいご縁ですね。ちなみに、牝牛にこだわり始めたのは独学で気づかれたんですか?

加賀さん:

はい、まさに独学です。私はどこかで修行したわけでも、師匠がいたわけでもなくて、元々は焼肉屋での8年の経験しかなかったんです。そんな状態で起業して、最初は定食屋からのスタートでした。

食べログより 以前構えられていた定食屋さん、閉店後は毎日料理の研究に励んでいました

 

加賀さん:

でも毎日お肉を扱って、お客様の反応を見て、自分でも試食を繰り返していく中で、「これは美味しいな」と感じるお肉にはある共通点があることに気づいたんです。それが全部、「牝牛」だったんですよ。


そこから「なぜ牝牛が美味しいのか?」をひたすら調べて、脂の融点の違いや肉質のきめ細かさ、香りの良さなど、理由が見えてきたんです。お客様に本当に美味しいお肉を提供するには、やっぱり牝牛だと確信を持てたのは、すべて現場での経験と試行錯誤のおかげですね。


── お肉について、とことん研究されたんですね!

加賀さん:

もう毎日毎日、寝る間も惜しんで研究しました。最初の10年くらい、布団で寝た記憶ないです笑 本当に美味しいお店に行って、自分で食べて学んで、見て盗んで、実践して……の繰り返しです。


── その努力があって今の「肉割烹 加賀屋」があるわけですね。

加賀さん:

そうですね。3年目にお店を改装して、いろんなお肉を扱うお店を始め、さらに今の「肉割烹」のお店を始めました。当時「肉割烹」という業態はほぼなくて、うちが先駆けの一つでした。


── “焼肉”じゃなく“肉割烹”にこだわった理由は?

加賀さん:

そもそも焼肉屋をやりたくても、資金がなくてできなかった(笑)。でもやっていく中で、和牛に対する愛情が深まっていって、「和牛は日本の宝なのに、和食で和牛を押し出してるお店が少なすぎる」と気づいたんです。だからこそ、自分の店では和食として、箸で食べられる肉料理を提供しようと決めました。


熟成ミニ樽との出会いと“お客様と育てる”ウイスキーの魅力

── ここからは、熟成ミニ樽について伺いたいと思います。加賀さんが最初にミニ樽を導入されたきっかけは何だったのでしょうか?

加賀さん:

最初に使ったのは、実は他社さんのミニ樽でした。もう8〜9年くらい前かな。お客さんのウイスキーをミニ樽に入れてキープしていました。それをしばらく使っていたんですが、やっぱりいろいろと課題があったんですよ。


── どんな課題だったんですか?

加賀さん:

まず、樽の木が薄くて8mmくらいしかなくて、いわゆる「天使の分け前」が多すぎたんですよね。つまり、ウイスキーがどんどん蒸発して抜けてしまう。3ヶ月に一度くらいしか来られないお客様の樽なんて、スカスカになってることもありました。


── それはお客さんに申し訳ないですね……。

加賀さん:

そうなんです。キープしている樽も15〜16本くらいあって、さらにそこにコロナが来た。お客さんの来店頻度も落ちて……「このままじゃ管理しきれないな」と思っていた時に、TARU HOLICの広告を見たんです。木の厚さが18mmもあるところが魅力でした。


熟成ミニ樽商品ページより

── そこでTARU HOLICを導入されたんですね。第一印象はいかがでしたか?

加賀さん:

厚さが18mmもあるから、初めて手に取った際はオークのしっかりとした香りを感じました。そしてウイスキーを熟成すると数週間でどんどんまろやかになっていくんです。その変化を楽しんでもらえる。“最初は力強く、後から深みが増す”。これはお客様にも大好評でした。そして「天使の分け前」も減りましたね。


── 熟成の過程を楽しめるんですね。お客様の反応はいかがですか?

加賀さん:

みなさんすごく喜んでいます。特に、2〜3週間経って再来店された時に「変わった!」と実感してもらえるのが大きいですね。しかも、うちは樽の蜜蝋(ミツロウ)塗りをお客様ご自身にやってもらってるんですよ。


── えっ、お客様が?

加賀さん:

はい。お客様用に専用の蜜蝋を用意していて、「そろそろ塗りに行かなきゃ」って、自分の樽に愛着を持ってくださる。育てる感覚ですね。


── ちなみに樽の保管場所はどのようにされていますか?

加賀さん:

カウンターの背後にあるボトル棚の上に並べてます。扉付きで腰の高さぐらいの棚ですね。入りきらないものは中に。温度管理にもかなり気を遣っていて、定休日でもエアコンはONにしています。


── 樽の環境として理想的ですね。

加賀さん:

うちはワインセラーも3台あって、ワインも扱ってるので、空調管理は年間を通して徹底しています。湿度や温度の変化も味に影響しますから。


── 実際にどんなウイスキーを熟成させているんですか?

加賀さん:

うちはジャパニーズウイスキーしか置いてないんですが、結局は白州か山崎が多いですね。やっぱりシングルモルトが向いてます。好みもありますが、白州はハイボール、山崎はストレートやトワイスアップ、ロックでの飲み方をおすすめしています。


── 飲み方にも工夫があるんですね。

加賀さん:

あとはボールの大きいワイングラスにちょこっと入れて、1時間ぐらい置いておくとすごく香ばしい香りや、チョコレートのニュアンスが出てくるんです。その香りを味わいながら料理を楽しむ方も多いです。

 

“味の変化”を楽しむ贅沢──常連が語る「戻れなくなるウイスキー体験」

── TARU HOLICで熟成させることで、ウイスキーにはどんな変化があると感じますか?

加賀さん:

最初の2週間くらいで、樽の香りがグッと移りますね。木の香りが強くつくんだけど、それがまたいい。そこからだんだん口当たりがまろやかになって、深みが増していくんです。


── まさに“育っていくウイスキー”ですね。お客様の反応は?

加賀さん:

「全然違う」と感動される方が多いです。特に、普通のウイスキーに”戻れなくなった”って声は多いですね。

あとは大変気に入って「俺の山崎を飲ませてあげたい」ってお知り合いを連れて来られる方もいますね。


── それは嬉しい反応ですね!樽の管理はどのようにされていますか?

加賀さん:

うちは“飲んだ分だけ補充”というスタイルをとっていて、お客様が飲み終わったら、その場で次のボトルから継ぎ足すようにしています。


──継ぎ足すことで、樽の中身がずっと育ち続けるんですね!

加賀さん:

そうなんです。しかも、前に使ってた他社のミニ樽だと、4ヶ月目くらいでアルコールが抜けてしまって、美味しくなくなってた。でもTARU HOLICは樽が分厚い(18mm)ので抜けにくいし、味の持ちもいいです。


ご家庭でも楽しめる“育てるお酒”──高級でなくても変化は出る

お店にはお客様のキープされているミニ樽がずらりと並んでいます

── ご自宅でも使いたいという声はありましたか?

加賀さん:

はい。「家でもやってみたい」「お店のとは違うのを試したい」って言ってくださるお客様もいました。実際、うちで試飲して、家用にもう一本欲しいって発注された方もいます。


── ご家庭で楽しむなら、どんなウイスキーが向いてますか?

加賀さん:

僕は「高いお酒じゃなくてもいい」と思ってます。むしろリーズナブルなウイスキーの方が変化が分かりやすい。例えば、倉吉のレギュラーとかニッカのシングルモルトなんかがいいですね。


── 具体的な飲み方のアドバイスなどはありますか?

加賀さん:

家庭ならやっぱりハイボールが手軽でおすすめです。ポイントは氷と炭酸ですね。氷は溶けにくい大きなもの、炭酸は細かい泡の強炭酸が良いです。うちは炭酸サーバーを使っていて、粒が細かくて香りが立ちやすいです。


── ウィルキンソンじゃダメですか(笑)?

加賀さん:

ウィルキンソンはちょっと泡が粗いかな(笑)。できれば炭酸メーカーとか、サーバーが理想ですね。


“育てる酒”の可能性──焼酎への挑戦と、すべての酒好きへ

プレミアムウィスキー、ワインの品揃えも豊富です。

── 今後、TARU HOLICのミニ樽を使って挑戦してみたいことはありますか?

加賀さん:

ありますよ。実は最近、焼酎の熟成にも興味があって


── おぉ、それは面白そうですね。焼酎を樽で熟成させると、どんな変化が起きそうですか?

加賀さん:

ウイスキーと近い変化があると思います。まろやかになって、樽香がついて、色もほんのり琥珀色に変わっていく。特に白い焼酎が変化していく様子は、見た目にも楽しいはずです。


── 最後に、この記事をご覧になる読者の皆さまへ、何かメッセージがあればお願いします。

加賀さん:

まず、飲食店をやられている方へですが、ミニ樽を取り入れることで確実に「お客様の来店回数」は増えると思います。ただし、正しく扱うことと、きちんと知識を持つことが大前提です。


お客様の方が詳しい、という状態ではダメですから。ウイスキーや樽について、最低限の理解と経験が必要。でも、それさえあれば、“俺の山崎を飲んでもらいたい”というような動機での来店も増えると思います。


── “俺の山崎”って、まさに特別な体験ですよね。

加賀さん:

そうなんですよ。ボトルを1本買って補充していくスタイルだから、お客様は樽に愛着が湧くし、自分のウイスキーって意識が強くなる。これって、飲食店にとって最高のリピート要因ですよ。


── 一般の家庭ユーザーに向けてはいかがでしょうか?

加賀さん:

家庭で使うにしても、ミニ樽はただのおしゃれアイテムじゃなくて、立派な“育てる酒器”です。高級なウイスキーじゃなくても、香りや味の変化がはっきり感じられるので、普段飲みにちょっと贅沢を加えたい方にはぴったり。


「なんとなく美味しくなる」ではなく、“育っていく味わい”を自分で感じられる。これは本当に面白い体験だと思います。


おわりに

素材を見極め、時間をかけて「育てる」ことを惜しまない加賀さんの姿勢は、お肉もお酒も“本当の美味しさ”へと導いてくれるものでした。

TARU HOLICの熟成ミニ樽を通じて、お客様との新しい関係が生まれ、会話が生まれ、そしてまた次の来店へとつながっていく──。
そんな“育てる愉しみ”と“語れる味わい”がある場所が、ここ「肉割烹 加賀屋」にはありました。

ウイスキー好きの方も、和牛好きの方も、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

 

【肉割烹 加賀屋】

住所:〒270-0031 千葉県松戸市横須賀2-20-4

ホームページ:https://kagaya.jp.net/info/index.html

電話番号:047-710-0293

営業時間:当面の間、ランチ 11時〜14時30分 ディナー 17時~23時

お任せコースの当日の予約受付は16時まで、アラカルトは予約なしでもご利用いただけます。

定休日:毎週月曜日